連載/インタビュー記事

フジサンケイビジネスアイ「Bizクリニック」(全15回、2020年)

President Atsushi TAKIGAWA

筆者プロフィール

エヴィクサー 代表取締役社長 瀧川 淳
たきがわ・あつし 一橋大商卒。2004年にITスタートアップのエヴィクサーを設立し現職。08年以降、デジタルコンテンツ流通の隆盛をにらみ、他社に先駆けて自動コンテンツ認識(ACR)技術、音響通信技術を開発。
テレビ、映画、舞台、防災などの分野へ応用し、「スマホアプリを使ったバリアフリー上映」「字幕メガネ」を定着させる。40歳。奈良県出身。

予告回 2020年3月31日掲載

「従来の延長線上にない別の未来へ」 (ビジネスリノベーション社長 西村佳隆様)
→ 2020.03.31 SankeiBiz(外部サイトへのリンク)


連載15回分の記事については、連載記事をまとめた小冊子(PDF)、英語翻訳版を下記にご用意しております。
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第1回 音の信号処理が「字幕メガネ」に (2020年4月7日掲載、4月11日Yahoo!ニュース転載)

→ 2020.04.07 SankeiBiz(外部サイトへのリンク)

フジサンケイビジネスアイ 2020年(令和2年)4月7日付 (記事をクリックすると拡大イメージがご覧になれます)
フジサンケイビジネスアイ 2020年(令和2年)4月7日付 音の信号処理が「字幕メガネ」に 松竹・KADOKAWA配給映画「Fukushima 50(フクシマフィフティ)」が3月に公開され、ヒットしている。ところで、新型コロナウイルス感染症拡大予防の観点から大規模な告知は見送られたものの、この映画の公開と同時に全国60超の映画館で開始されたサービスがあるのをご存じだろうか。「字幕メガネ」の貸し出しサービスだ。「字幕メガネ」は、「メガネ型ディスプレー端末で見る字幕ガイド」だ。透過型のレンズに表示した字幕が映画のスクリーンに重なるように浮かび上がり、聴覚障害者も映画を楽しめる。障害者が健常者と同じスクリーンで同時に映画を楽しむための仕組みの一つであり、映画業界で長年にわたって検証されてきた。メガネ型端末はまだ一般に普及しておらず、このような仕組みがインストールされた「字幕メガネ」が貸し出されることになった。一方、視覚障害者向けには「スマートフォンのイヤホンから聴く音声ガイド」が専用アプリ「HELLO! MOVIE」(ハロームービー)としてiOS・Android向けに無料で提供されている。スマホは広く普及しているのでユーザーの持ち込みで対応し、2015年ごろから定着してきている。この「字幕メガネ」「HELLO! MOVIE」の開発・提供を行っているのがエヴィクサーで、筆者が社長を務めている。エヴィクサーは「音の信号処理」が生業で、いわゆるシーズ技術の開発企業だ。この連載では、「音の信号処理」が「字幕メガネ」となるように、「技術やシステムに名前が付く」ことの経緯やポイントを、持続可能な開発目標(SDGs)などの社会テーマも踏まえながら解説していきたい。映画館内のデバイス活用の実証実験では、「全国の映画館ならどこでも既にあるもので機能する」「操作がとても簡単」「デバイスの通信機能を無効とする“機内モード”で機能する」など、ビジネス要件と技術要件が洗い出され、エヴィクサーの「音響同期システム」に合致した。映画の音から場面を特定する機能をメガネ型端末やスマホに搭載することで、ユーザーは煩雑な操作を必要とせず、拡張現実(AR)のように手元のデバイスに字幕ガイドと音声ガイドを同期再生する機能を実現できた。映画関係のシンポジウムで、視覚障害者の人から「この仕組みのおかげで、映画観賞が趣味だという視覚障害者が増えている。私もその一人」とあいさつされた。社会的課題を解決するには当事者のニーズや、もっと強い「ウォンツ」に応えることが必要不可欠だと実感した。


第2回 「勝ちにも不思議の勝ちはない」 汎用技術は採用必然性の積み重ね (2020年4月14日掲載、4月18日Yahoo!ニュース転載)

→ 2020.04.14 SankeiBiz(外部サイトへのリンク)

フジサンケイビジネスアイ 2020年(令和2年)4月14日付 (記事をクリックすると拡大イメージがご覧になれます)
フジサンケイビジネスアイ 2020年(令和2年)4月14日付 「勝ちにも不思議の勝ちはない」 汎用技術は採用必然性の積み重ね プロ野球の野村克也氏が2月に亡くなった。野村氏が好んだ名言に「勝ちに不思議の勝ちあれど、負けに不思議の負けはなし」という一節がある。ビジネスでも「負けは必然」という姿勢から多くを学ぶことができる。さらに、企業は永続的な成長を求められるわけだから、「勝ちにも不思議の勝ちはない」という意識が必要だろう。シーズ技術の営業現場では、「汎用(はんよう)性」という言葉をよく耳にする。「この技術はおもしろい。とても汎用性がある。うちで使っている技術と置き換えたら、もっといろんなことができる」といった具合だ。汎用性とは「多目的に、多用途に、広範囲に使える特性」と解釈されるため、ビジネスチャンスをうかがっている立場では、なんともポジティブな理想的な言葉に感じられる。事実、先の会議は盛り上がり、「秘密保持契約(NDA)を交わして具体的な検討に入りましょう」「次回は実務担当者や決定権者をそろえて打ち合わせを行いましょう」と商談が進んだ。このようなやり取りやプロセスを一概に否定することはできない。しかし、消費者や潜在顧客は自らのニーズと商品・サービスの価値が一致することを求めているのだから、開発当事者なら「汎用性というのは個別的・特殊的な事例から導き出した結果論ではないか」という着想をすべきだ。実際に、さまざまな試行錯誤を経てファーストユーザーと出合う。ここで言うファーストユーザーとは、何かのバーターでとか、年度予算の残りでとか、開発前から見込みユーザーとして約束していたとか、という事例は含まず、“ガチンコ”の提案事例とする。開発当事者からすれば、かなりの年月と工数をかけて勝ち得た成功体験かもしれない。シーズ技術の開発企業にとっては、相手方の要望に合致する提案とすべく全社一丸となって進めることだろう。ここで自社のシーズ技術が汎用性に近づくためには、「なぜ採用されたのか」「なぜ、その要件や要望が出てきたのか」「他の技術では通用しなかったのか」などを徹底的に分析し積み上げることが必要だ。筆者は、このガチンコユーザーから得た採用理由の分析結果を「採用必然性」と表現している。この採用必然性の中に、他の技術の代替や改善ではなく独自の価値が含まれていれば、差別化や競争優位性を築きつつ横展開でき、汎用性を帯びてくる。汎用性は採用必然性の積み重ねのうえに見いだされる。勝ちにも不思議の勝ちはない。


第3回 アフターコロナへ 自社技術デビューの鍵はトレンド把握 (2020年4月30日掲載、5月7日Yahoo!ニュース転載)

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フジサンケイビジネスアイ 2020年(令和2年)4月30日付 (記事をクリックすると拡大イメージがご覧になれます)
フジサンケイビジネスアイ 2020年(令和2年)4月30日付 アフターコロナへ 自社技術デビューの鍵はトレンド把握 2020年は全人類にとって試練の幕開けとなった。新型コロナウイルスの感染拡大は全てのビジネスに影響を及ぼしている。有識者は「アフターコロナ」という言葉で価値観と世の中の変化を予測している。それを支える技術にもトレンドが生まれるだろう。自社技術のデビューの成功のカギは、このトレンドの把握が握っている。米コンサルティング大手のガートナーは毎年、どんな新技術が世の中に浸透していくかを分析した「ハイプ・サイクル」を発表している。新技術のフェーズはグラフ上にマッピングされ、社会への浸透度によって黎明(れいめい)期、「過度な期待」のピーク期、幻滅期、啓蒙(けいもう)活動期、生産性の安定期という5つの状態に分類される。筆者はシンプルに「ここ最近のイケてる技術を教えてくれる」発表と捉えている。シーズ技術の開発当事者にとって、自社製品やサービスのデビューをどう飾るかに重要な示唆を与えてくれる。具体的には、「どうすれば注目を集めることができるか」「どの分野であれば過度な競争を避けられそうか」の2点だ。今回は前者のケースを取り上げる。エヴィクサーは、「イケてる技術と組んで前代未聞の企画を実施」しようと、13年夏公開の角川書店配給映画「貞子3D2」に音の信号処理技術の提供を行った。「スマ4D」というコンセプトによりホラー映画の演出をスマートフォンによって倍増する企画で、お客さんがスマホを見ながら映画を観賞すると、スクリーンと連動してスマホに電話がかかってきたり、カメラが起動したりと予期せぬことが起こる。イケてる技術とは「スマホアプリ」「各種センサー」「体感型・4D映画」であり、前代未聞の企画とは「映画の上映中にスマホを活用すること」を含んでいた。この取り組みは、数多くのメディアに取り上げられ、クリエイティブや新技術の各賞を受賞するなど注目を集めた。盗撮や盗聴の引き金になることを危惧する指摘を受けながらも、技術上の強みをしっかり示せたことで「次はこういうことができないか」という数多くの問い合わせを受けた。イケてる技術はもともと社会的な関心が高く、メディアにも取り上げられやすい。一方、前代未聞の企画は、さまざまな工夫を施さないと非常識だと批判を浴びる。単に注目を集めるだけではなく、「これ、どうやって実現したの」という疑問に対する答えや、課題とそれを解決する仕組みの説明を伴った情報発信が、シーズ技術のデビューには重要だ。


第4回 技術ブランディングは急がず育てるのが望ましい (2020年5月12日掲載、5月18日Yahoo!ニュース転載)

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フジサンケイビジネスアイ 2020年(令和2年)5月12日付 (記事をクリックすると拡大イメージがご覧になれます)
フジサンケイビジネスアイ 2020年(令和2年)5月12日付 技術ブランディングは急がず育てるのが望ましい 心理学者の故・河合隼雄氏は、著書『こころの処方箋』の中で「速断せずに期待しながら見ていることによって、今までわからなかった可能性が明らかになる」という一節を残した。シーズ技術の事業化にも同様のことが言える。自社技術の可能性を探究するためにも、ブランディングは急がず、満を持して始めるのが望ましい。小さく生んで大きく育てるわけだ。ブランディングは嗜好(しこう)品、高級アパレルの世界から、技術や成分の事業化戦略まで広がってきた。成分ブランディング、要素ブランディング、エンジニアリング・ブランドなどのケーススタディーを伴う研究が国内外で数多くなされている。今やシーズ技術の事業化にブランド戦略は必要不可欠だ。「ゴアテックス」「ドルビー」「シマノ」と聞くと、防寒具や雨具、劇場の音響、自転車を思い浮かべる人が多いだろう。完成品の性能をイメージするときに信用を与えることが技術や成分のブランドの役割であるから、見事に機能していると言える。エヴィクサーでは、シーズ技術の開発を本格的に始めてから8年もの間、エンターテインメントという特定の分野で顧客側の強いニーズを探り当てるまで、技術のブランドは一切打ち出さない準備期間を持った。理由は2つあり、「具体的なスペックを示せない」「どんな特定の分野でもトップになる勝算をつかむまで粘っていた」という点にある。「キャズム(溝)理論」で有名なマーケティング学者のジェフリー・ムーア氏は、この準備期間を「ボウリング・レーン」と表現している。ニッチ市場は競争がそれほど激しくない。ニッチトップを目指し、培ったノウハウや信用で地力をつけ、それを軸にしてブランドを打ち出すことが有効だとする。ボウリングは初心者でもそこそこスコアを出せるスポーツであり、自分の思い通りに投げられて、1本のピンが倒れれば隣のピンも連鎖して倒れるかもしれない、という理屈だ。エヴィクサーが開発した音の信号処理というシーズ技術は、映画館内の同期技術としてホラー映画の演出でデビューし、数年の実証を重ねて、バリアフリーや外国人向け支援などのさまざまなニーズと独自の提供価値を探り当てた。課題解決の積み重ねの中でスペックが定義できるようになり、「Another Track(アナザー・トラック)」という技術のブランドを打ち出した。従来のサービスに加え「新しいもうひとつの何か」を提供できるという確信を持ったブランディングだった。


第5回 重要な「アクセシビリティ」という考え方 (2020年5月19日掲載、5月24日Yahoo!ニュース転載)

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フジサンケイビジネスアイ 2020年(令和2年)5月19日付 (記事をクリックすると拡大イメージがご覧になれます)
フジサンケイビジネスアイ 2020年(令和2年)5月19日付 重要な「アクセシビリティ」という考え方 「iPhone(アイフォーン)を持つようになって、迷子になれるんですよ」-。映画や舞台のバリアフリー上映に携わるにつれ、障害者のシンポジウムでの登壇機会に恵まれるようになった。映画館や劇場の席に座ってから使うシステムだけでなく、自宅からどうやって電車やバスに乗り、待ち合わせ場所に向かうか、どんなシステムがあれば便利か。そのニーズについて意見交換する中、視覚障害者の人が発したのが冒頭の言葉だ。スマートフォンに実装されているボイスオーバー(画面に表示された文字やボタンの内容を読み上げる機能)や拡大鏡、音声入力などのユーザー補助機能は、おおむね「アクセシビリティ」と表現される。日本では「バリアフリー」という表記の方がなじみ深いが、SDGs(持続可能な開発目標)達成には、誰一人取り残さないという意識として、ユーザーの自由な使い方を補助するアクセシビリティという発想が不可欠になってきた。2018年総務省の事業で、競技会場における外国人や障害者の緊急時避難に関して、エヴィクサーは音響通信技術をベースとしたICT(情報通信技術)利活用の提案を大手電機メーカー・大手シンクタンクと組んで行い、非常放送など館内設備の多言語化やビジュアル化の有効性を実証した。数万人以上の観客が一堂に世界から集まれば、文化やその場で得られる情報に違いが生まれ、緊急時の行動原理に乖離(かいり)が生じやすい。避難は「誰一人取り残さない」ことが要件となるため、採用技術の評価に加えて、日常時の運用も視野に入れ、当事者となる外国人や障害者が実証に参加することが義務付けられた。エヴィクサーは音響通信で一斉制御するスマホの活用方法を全国のスタジアムで実証済みだった。それを含め、専門性の異なるメンバーが積極的な意見交換を行うことで実施要領は組み上がり、東京都調布市にある東京スタジアム(味の素スタジアム)と武蔵野の森総合スポーツプラザを会場とした2日間にわたる実証は有効という評価を得た。本事業の最終段階で、有識者から「外国人や障害者は会場で流れている全てのアナウンスを確認したい」との指摘を受けた。筆者は「適切な情報を安定したシステムで確実に届ける」ことを念頭に要件を組み上げたと説明しながら、冒頭の言葉を思い出した。多種多様なニーズに応えるためには、設備としてのシステム提供だけでなく、パーソナルデバイスの活用、そしてユーザー側にも選択肢が用意されるアクセシビリティの思想が重要だ。


第6回 オープンイノベーションへ助成活用 (2020年5月26日掲載、5月30日Yahoo!ニュース転載)

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フジサンケイビジネスアイ 2020年(令和2年)5月26日付 (記事をクリックすると拡大イメージがご覧になれます)
フジサンケイビジネスアイ 2020年(令和2年)5月26日付 オープンイノベーションへ助成活用 シーズ技術は、市場ニーズが顕在化していないことが多く、性能やビジネスモデルについて客観的評価を高めていくことが事業化への道標となる。自社の取り組みに終始せず、国や地方自治体などの助成事業を活用して複数の企業間での連携を成功させ、オープンイノベーションにつなげていくことが有効だ。その際、中小企業にとっては、「助成のお墨付きを得るのではなく、事業目標をオープンにして社内外にコミットする」という意識づけが欠かせない。エヴィクサーでは5年ほどの期間で、(1)官公庁の助成と実証実験(2)共創イベント「ハッカソン/アイデアソン」への技術提供(3)アワードへの応募(4)ユーザー団体への参加と協調(5)特許公開を含む知財戦略の遂行(6)大手企業との資本業務提携-などを進めた。「中小企業目線のオープンイノベーション」の実践例と言えるだろう。2017年には中小企業庁から新連携事業(異分野連携新事業分野開拓計画)として「伝統芸能における機動性の高い舞台解説サービス開発・事業化」が採択され、3年間の活動について助成を受けることとなった。歌舞伎・文楽のコンテンツを多く有し音声ガイドで長年実績がある企業をコア企業としつつ、能楽業界で江戸時代からの歴史を持つ企業、安定した音響通信技術を有するベンチャー企業(エヴィクサー)の3社の連携をプロジェクト体制とした。各社の強みを生かすことで、大規模劇場以外の劇場に解説サービスを提供することが可能となる。一見、「伝統芸能+ICT(情報通信技術)」という単純な図式に見えるものの、ユーザーの普遍的な価値を捉え、業界関係者との意思疎通、興行時における運用ルールを踏まえたシステム設計を実現するなど、プロジェクト成功には中小企業一社では賄い切れない要素も多い。また、プロジェクトを統括するリーダーシップがなければコスト要素も不明瞭で、中長期的な目標も掲げにくい。このプロジェクトは、市場ニーズに向けた強みの補完だけでなく、コア企業を明確にする体制が功を奏し、助成期間中に全国数十カ所での導入を見込むなど、新連携事業のモデルケースとして取り上げられるに至った。新連携事業の審査会の発表は、コア企業の代表者が行う。筆者のケースでは「日本の伝統芸能を一番分かってほしいのは実は日本人。この事業化は悲願」と力強く訴え、連携企業の結束を強めるとともに中長期の事業目標をコミットした。助成獲得が目的ではないから成功した。


第7回 アワードに挑み開発ストーリー打ち出す (2020年6月2日掲載、6月6日Yahoo!ニュース転載)

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フジサンケイビジネスアイ 2020年(令和2年)6月2日付 (記事をクリックすると拡大イメージがご覧になれます)
フジサンケイビジネスアイ 2020年(令和2年)6月2日付 アワードに挑み開発ストーリー打ち出す ヒーローインタビューは、ファンにとって記録がストーリーになる瞬間だ。勝利に貢献するヒットやゴールを振り返りながら、その選手がどんな気持ちで試合に臨んでいたのか、けがやスランプをどうやって乗り越えたのかが語られ、感動を生む。ビジネスの分野でも顧客やパートナー企業などとの間で多くの共感を生むために、アワード表彰でヒーローインタビューの機会を得て、自社技術の開発ストーリーの打ち出しを客観的に始めることが有効だ。エヴィクサーは2017年、音響通信によるデバイス制御ソリューション「Another Track」という技術ブランドを打ち出し、東京都ベンチャー技術優秀賞、中小企業優秀新技術・新製品賞ソフトウエア部門優秀賞など複数のアワードで表彰された。シーズ技術の事業化途中フェーズでも、アワード大会への応募は有効だ。自社技術・サービスのコンセプト、事業プランを簡潔にまとめる作業や審査プレゼンを通して、幅広い分野の有識者から講評を受けることができる。結果・成果でしか評価されない実ビジネスと違って、アワードはインプット思考で臨み、「未完の大器」として応募し表彰されることが許される。「Another Track」は地道に積み上げた検証結果と実績、幅広い応用範囲が評価された。表彰式でのインタビューをはじめ、さまざまなメディアでの露出機会に恵まれ、「音響通信とは何か」「どんなことができるのか」「今後どんな展開を考えているのか」という質疑応答だけでなく、「どういった問題意識で」「どのような試行錯誤をして」完成に漕ぎ着けたかの苦労話を語ることができた。さながらヒーローインタビューのような感覚で、それまで点と点だった当事者だけの出来事がストーリーとなった。開発ストーリーは自社の存在意義を表す。メディアを通じて、自社技術の開発ストーリーを客観的に打ち出せたことは、新規メンバーの採用や、大手企業との提携などの局面で、社内外に大きな共感をもたらした。新しいニーズを探りあて、市場をつくるというシーズ技術事業化の難解なゴールなら、なおさらプロジェクトメンバー間で事業に取り組む姿勢や価値観の共有をもたらす仕掛けづくりが重要となる。特に中小企業は知名度の低さから、企業間連携やオープンイノベーションに取り組む際には大企業の前に埋もれやすい。開発ストーリーの醸成は、技術ブランドのスペックを裏付けるだけでなく、その技術の出自を示す上でも必要不可欠だ。


第8回 企業提携の間を埋める「味わい深い」商人の心得 (2020年6月9日掲載、6月13日Yahoo!ニュース転載)

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フジサンケイビジネスアイ 2020年(令和2年)6月9日付 (記事をクリックすると拡大イメージがご覧になれます)
フジサンケイビジネスアイ 2020年(令和2年)6月9日付 企業提携の間を埋める「味わい深い」商人の心得 経営学の教科書には外来語由来のカタカナが多い。一方、日本の商売用語には、お金を受け取る行為を婉曲(えんきょく)にしながら、顧客を一見(いちげん)・お得意・ごひいき・お帳場、株主や配当を旦那衆・タニマチ・大入袋・出世払いという具合に、背景にある関係性や心理をうまく表現している言葉が多く、味わい深い示唆を与える。中小企業のオープンイノベーションでは、大手企業を相手方にして、一般顧客から関係が深化しつつ、先進的なニーズを開拓する「リード・ユーザー」としての共同開発や、出資を伴う株主となり得る。両者の関係は契約の整理だけでなく、信頼関係を揺るぎないものとするために、その局面ごとの関係性について色分けしておく必要がある。具体的には、「定量的な共通利益」をベースに「定性的な共通課題」を書き出して事業プランを策定し都度確認し合うこととなるが、その際、お互いのリーダーが商人(あきんど)の心得を取り入れて契約の行間を埋める創意工夫と謙虚な粘りも欠かせない。エヴィクサーは2015年から5年をかけて大手電機メーカーと、(1)商取引の反復(2)競争優位性の評価(3)共同実験(4)投資・事業戦略の共有(5)試作・カスタムの優先(6)知財戦略の協働-という流れで提携を進めた。「新しいニーズを探りあて、市場を創生する」というイノベーションを標榜(ひょうぼう)するならば、「これだけの性能を達成すれば従来技術とは別の新しい技術となる」「ある分野で安定稼働している実績があれば違う分野にも応用可能」「既に開発した趣旨のソリューションであっても新技術を組み合わせれば新規顧客の獲得が可能」などというような課題と仮説の共有を、時系列で変遷する関係性や役割の調整を乗り越えて、切磋琢磨(せっさたくま)しながら進めることとなる。このすり合わせは「言うは易く行うは難し」だ。中小企業にとっては虎の子の技術であり、ビジネス条件を意識しながら奥歯にモノが挟まったような物言いでリスクを覆いたくなる。大手企業側も不確実性の高いプロジェクトに経営資源を注ぎ込む意思決定は難しい。とりわけ課題を共有することは、手の内を明かすことにも等しい。この提携の重大局面で「どうして数万人もいる企業が十数人の企業に依頼するのか」という意見があったが、提携相手方のリーダーは必死で説得してくれた。オープンイノベーションの挑戦は、課題を乗り越える過程で培われる信頼関係がベースに必要で、それは個人にひもづく商人の心得によってより強固となる。


第9回 技術者と「同じ釜の飯を食う」楽しさ (2020年6月16日掲載、6月21日Yahoo!ニュース転載)

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フジサンケイビジネスアイ 2020年(令和2年)6月16日付 (記事をクリックすると拡大イメージがご覧になれます)
フジサンケイビジネスアイ 2020年(令和2年)6月16日付 技術者と「同じ釜の飯を食う」楽しさ 文系学部卒の筆者が、技術ベンチャーを20代半ばで創業したことに触れ「どうして音の事業をやろうと思ったのか」と質問される機会は少なくない。ビジネスモデルの着想・起点を問う目的や、経営リスクを指摘する狙いなどがあるのだろう。しかし、聞かれる側からするとシンプルに、国籍・性別を問わず「技術者と同じ釜の飯を食う」ことが楽しいから、というのも率直な思いだ。思いの中心には、技術者への敬意とライバル心があり、それこそが筆者に経営者としての成長を義務付ける原動力となっている。エヴィクサーは2014年頃から、数多くの共創イベント「ハッカソン/アイデアソン」へ技術提供を行っている。ハッカソンとはプログラミングに没頭する「ハック」という言葉と「マラソン」を組み合わせた造語で、社会課題の解決などをテーマとして、数日から数週間の短期間で新製品・新サービスを作り出し、その出来栄えを競う。参加者はエンジニア、デザイナー、プランナーらを対象に広く一般から募集され、意気投合すれば初対面同士その場でチームを作ってチャレンジすることもドラマを生み、賞金やスポンサー企業との協業チャンスなど特典が用意される表彰式は大いに盛り上がる。技術を提供する側も、自社の技術に関して「どんな形態で提供すれば扱いやすいか」「どんな議論を通じて、どんな組み込み方で実装するのか」「どの部分までオープンにすべきか」という、実ビジネスとは違った開発者目線のフィードバックを得られることがメリットだろう。筆者も会場の雰囲気が好きでよく顔を出していた。目の前にある材料と限りある時間は公平で「いかに新価値を生み出すか」という目標を個々が咀嚼(そしゃく)し、「動くものを作るだけでなく伝えることも含めて、チームにどう貢献すべきか」を考えていないメンバーは評価されない暗黙のルールに共感を覚えたからだ。筆者自身、「客先のデモはちょい見せではなく本番。第一印象で値段が変わる」ということを痛感し、創業当時は技術に金をつけるのは自分の役割だと、独善的に活動していた節があったと反省するに至った。企業の営業活動も短期間のプロジェクトの積み重ねであり、「着想~試作~開発~商談~納品~運用」は同じ釜の飯を食うメンバーが全員一緒になって紡ぎ出す一連と反復の創作活動だろう。ライバル心むき出しに技術者と切磋琢磨(せっさたくま)しながらチームへの貢献に挑む楽しさこそが原点だと何年経っても思えることは起業家冥利に尽きる。


第10回 アフターコロナ 共感生む競争優位性が鍵 (2020年6月23日掲載、6月27日Yahoo!ニュース転載)

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フジサンケイビジネスアイ 2020年(令和2年)6月23日付 (記事をクリックすると拡大イメージがご覧になれます)
フジサンケイビジネスアイ 2020年(令和2年)6月23日付 アフターコロナ 共感生む競争優位性が鍵 「コンペティター(競争相手)はどこか」と投資家らに質問を受ける機会は多い。差別化戦略を議論するのに有効だ。一方、コロナ後の先行き不透明な情勢では、同業他社との比較を超えて、SDGs(持続可能な開発目標)に代表される国際的な共感を生む目標設定と、それにひもづいた自社の競争優位性を打ち出すことが、経営者により一層求められている。「競争」という言葉は、福沢諭吉が翻訳した新語の一つとされる。戦記物が多く争いが絶えなかった近代までの日本史からは意外だが、辞書を引くと「同じ目的に向かって勝ち負けや優劣を競いあうこと」と定義されており合点がいく。この“新語”は「同じ目的に向かって」という前提、すなわち身分制度がなく共通の尺度となる貨幣経済が発達し初めて登場した概念というわけだ。同じ時代が舞台の歴史小説『竜馬がゆく』で亀山社中・海援隊が結成される場面は、鎖国と封建制で閉塞(へいそく)感極まりない当時に全く新しい価値観を持ったカンパニーが誕生する躍動感が描かれている。常識と固定化されていたことや無謀と諦めていたことを打破していく坂本龍馬に感動した人も多いだろう。「競争」のルーツは、そうした自由を希求する勇気と視座の高い目標設定がもたらした人類の英知と考える。エヴィクサーは「音の信号処理」技術で社会に貢献している。「当たり前と考えている習慣や価値」でも社会課題をはらんでいる事象に向き合い、「シーズ技術からの深い考察と一貫性のある研究開発」とすり合わせる。それによって「人々の行動原理を変える」新たなニーズや価値を見いだし、市場を創生するというのが目標だ。改めて競争のルーツに身を寄せ、「何を同じ目的に設定して」シーズ技術の事業化に挑むのかという原点に立ち戻り、共感を生む競争優位性の実現にチャレンジする。このようなチャレンジには、(1)数値目標が定まらない中でリスク許容度から絞り出す意思決定(2)極端なニーズに対応しつつ社会実装の糸口を探るデザイン手法(3)社会問題の根本的な解決を図るために、研究フェーズにある技術の実装や技術の根元から改良することをいとわない開発姿勢-など難題もあるが、情報通信技術(ICT)の発達で企業活動が効率化され、成功事例も出てきている。次世代の競争活性化には、龍馬に倣い「世に生を得るは事を成すにあり」という視座の高い信念を持つ経営者が切磋琢磨(せっさたくま)する風土が必要不可欠だ。


第11回 経営者自身も“ウェルビーイング” (2020年6月30日掲載、7月5日Yahoo!ニュース転載)

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フジサンケイビジネスアイ 2020年(令和2年)6月30日付 (記事をクリックすると拡大イメージがご覧になれます)
フジサンケイビジネスアイ 2020年(令和2年)6月30日付 経営者自身も“ウェルビーイング” 「家族にも薦められるものを売ってるんでね」-。出版社からインタビューを受けた際、自社の営業部長が誇らしげに答えているのを目のあたりにし、筆者がとても「幸せを感じた」言葉だ。近年多様化する価値観に対し、社外への競争戦略だけでなく社内すなわち従業員満足度にも重みを置くべきということで、「ウェルビーイング経営」という概念が注目されている。ウェルビーイングが意味するのは、「病気ではないという消極的な健康」よりも、身体的なことからモチベーション、社会的な意義に至るまで一貫して「ひとりの人間としてのやりがい」が腹落ちしている状態であり、そのベクトルを個人と企業がすり合わせる経営の重要性を示唆するのだろう。シーズ技術の事業化に10年以上チャレンジしていて常々思うのは、数値目標が定まらない社会課題へのチャレンジと社内メンバーのモチベーションをつなぎ合わせるための“かすがい”には、独善的な意味や承認欲求ではなしに「経営者自身も自分のウェルビーイングを自覚する」ことが必要不可欠ということだ。エヴィクサーは2019年までに数億円の資金調達を行ってきた技術ベンチャーだ。事業計画の進捗(しんちょく)度合いを計るKPI(重要業績評価指標)の設定に七転八倒しながら、フェーズごとに個人エンジェル、ベンチャーキャピタル、事業会社などからの出資と金融機関からの借入金を織り交ぜ、成長資金を捻出してきた。当初、がむしゃらにニーズの掘り起こしや顧客価値の創出に尽力することで経営者としての責任を果たそうとしたが、定量的な評価に乏しい場合、ほとんどの投資家とすれ違う挫折の連続だった。どうにかして社内メンバーを鼓舞したいと悩んでいたころ、冒頭の言葉を聞いて肩の力が抜け、「経営者である自分自身が幸せに感じること」をシンプルに“仲間”と共有して、試行錯誤の中でもチームが団結できたように感じている。研究活動や知的好奇心の延長線上で創業するスタイルが国策として推進されている。数多くの成功事例とともにその実行理論が整理され、「起業のプロフェッショナル化」が進むだろう。その際「自社はこうあるべきだ」という目線が先行するかもしれないが、主従・労使関係を超えて、「経営者も仲間とお互いにウェルビーイングを分かち合う」ことで、「自社は“自分たちのためにも”こうあるべきだ」と主人公に仲間を含めることができれば、難局を切り開ける確率が飛躍的に上がるだろう。


第12回 “聞こえない音”の最新技術は10年越し (2020年7月7日掲載、7月12日Yahoo!ニュース転載)

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フジサンケイビジネスアイ 2020年(令和2年)7月7日付 (記事をクリックすると拡大イメージがご覧になれます)
フジサンケイビジネスアイ 2020年(令和2年)7月7日付 “聞こえない音”の最新技術は10年越し 「未開の境地!“聞こえない音”の最新技術」-。今年4月にNHKで、エヴィクサーの音響通信技術の活用事例と筆者のインタビューが放送された際の番組タイトルだ。開発当事者からすると、うれしくも、照れくさくもある。聞こえない音とは、ヒトの耳では聞き取れない高い周波数の音を指す。人間は感知できないものの、スマートフォンやセンサーのマイクからその音響信号を取得し解析する技術を用いて、情報セキュリティー、エンターテインメント、災害予知などの分野に応用し社会課題を解決する事例が特集された。エヴィクサーでは研究フェーズにあった「音に情報を匿(かく)す・埋め込む」技術の社会実装の試みを2008年頃にスタートしたため、このように最新技術として紹介されるのは10年越しとなる。近年では、要素技術を深く掘り下げ、社会課題の解決を図る起業スタイルや事業化は「ディープテック」と呼ばれる。日本ではミドリムシのユーグレナや空間・立体認識のKudan(クダン)などがその代表例で、情報通信技術(ICT)の発達で応用コストが下がり、市場創生の新しいトレンドとして注目されている。古くからヒトの感覚は「視覚、聴覚、味覚、触覚、嗅覚」の五感に分類されてきた。今や現代人が1日に扱う情報量は江戸時代の頃の1年分に相当するという。情報の処理能力を高めると同時に、自動運転などのモビリティーサービスの拡充やSDGs(持続可能な開発目標)、不定期に起こりうる自然災害を背景として「見えない、聞こえない、カタチのないもの」の感知を補うアクセシビリティの機能向上も待ったなしの状況といえる。筆者の当初の着想は、グーグルのキーワード検索のように「音の検索」「映像の検索」ができると、視聴の処理能力を量も質も向上できるのではないか、という素朴なものだった。10年後、無線技術の進化で街中がインターネットに接続されるようになっても、「どうやって人間を置き去りにしないか」という課題が常に併存し、「音の信号処理」技術の出番が続く。「枯れた技術」と言われる分野であっても、人間や社会の根本的な課題に向き合う中で得られる気づきは時代の流れとともに変遷し、小さな結果でも共感を育むことで大きな新しい力となることを実感している。自社をディープテックとするのは後付けだが、「偶然を活用して社会課題を解決する万全の準備」を示唆する事業化アプローチは今後、より一層重要性を増してくる。


第13回 災害時に「今+その場所」へ意思伝達 (2020年7月14日掲載)

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フジサンケイビジネスアイ 2020年(令和2年)7月14日付 (記事をクリックすると拡大イメージがご覧になれます)
フジサンケイビジネスアイ 2020年(令和2年)7月14日付 災害時に「今+その場所」へ意思伝達 2020年は甲子園に“あの音”が鳴り響くのだろうか。高校野球なら、緊張感漂うプレーボールやゲームセットに伴ってサイレンが球場に鳴り響くシーンを思い浮かべる人も多いだろう。人は「音の記憶」とセットで思い出や行動パターンを呼び起こす。ドラマやCMのタイアップ曲は重要な演出の要素だ。また、避難を呼びかける非常放送でも警告音などの効果が盛り込まれている。店頭の「QRコード」にスマートフォンのカメラをかざして行う決済や、緑の非常口マークに代表される「ピクトグラム」など、視覚的な情報から言語によらず直感的な行動を促す取り組みは日常生活に浸透している。エヴィクサーでは音響通信技術を開発・実用化し、街中に設置されている多くのスピーカーとスマホなどのマイクをつなぐことで、「周囲はどんな状況なのか」「周囲にいる人がどんな情報を発信しているのか」といったその場に居合わせた人目線・人同士の意思・情報を今という時間軸とともに届けることを重視している。日常使いでは、サイレンを数秒にわたって大音量で放送するわけにはいかない。緊急時なら、発信したい意思・情報は状況に応じて変化する。音響通信には「一瞬に感じる程度、0.1秒で知らせる」「必要な人にだけ最適な形で届ける」「スピーカーから流れている音楽やデジタルサイネージに映し出されている映像が今どのあたりを放送しているのかが手元で同期される」といった機能をニーズの集積として盛り込んだ。スマートデバイスの普及とともに、音響設備がある場所ならどこでも実装可能なソリューションとして、テレビ・ラジオ、映画館・劇場からスタジアム、公共交通、避難・防災の分野へと展開を進めている。19年夏、神奈川県の逗子海岸で津波避難訓練が実施された際、逗子市の協力の下、行政防災無線放送にエヴィクサーの音響通信技術の信号を埋め込み、それをスマホアプリで受信して他言語でのテキスト、詳細なハザードマップを表示させる仕組みについて実験を行った。あらかじめ設定した目標地点すべてで音響通信による情報伝達に成功し、「既設の防災無線が使えることは、財政に制約のある自治体にとって導入しやすい」との評価を得た。自然災害の発生頻度は高まっている。既存インフラを十分に活用するためにもアナログとデジタルを融合しつつ、「今+その場所」にいる人へのきめ細かい意思伝達がより重要性を帯びてくる。


第14回 「芸術工学」が導くベンチャー像 (2020年7月21日掲載、7月26日Yahoo!ニュース転載)

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フジサンケイビジネスアイ 2020年(令和2年)7月21日付 (記事をクリックすると拡大イメージがご覧になれます)
フジサンケイビジネスアイ 2020年(令和2年)7月21日付 「芸術工学」が導くベンチャー像 エヴィクサーの技術者が名刺交換する際、肩書や英語表記を見た相手から「芸術工学とはどんな研究をされていたんですか」「英語だとアコースティック・デザインと表現されるんですね」と質問を受け、話が弾むことがある。営業の“アイスブレイク”といえるが、示唆に富む学術用語は技術者のバックグラウンドを知らせるだけでなく、取り組む事業の拡張性を代弁し、シンパシーを生むきっかけとなる。芸術工学の最高学府・ルーツは九州芸術工科大学、現在の九州大学芸術工学部。『技術の人間化』というユニークなスローガンの下、「いかに技術を人間生活に適合させるか」「人間が技術を賢く利用することによってより幸せな生活を送るため」と掲げられた教育方針や理念は実践的だ。クロステックやディープテックと呼ばれ、先鋭技術・要素技術の社会実装を窺うベンチャー企業にも欠かせない技術者像といえるだろう。同学部のウェブサイトでは「芸術工学=Design」と翻訳されており、アウトプットだけでなくプロセスにも関心が向かう。近年、デザインという言葉は意匠的な内容に限らず、英語本来の語義同様に、設計や創意工夫という意味合いも含めて使われることが多い。エヴィクサーの音響通信技術は、2012年頃からスマートフォンの普及と並走しつつも、その万能端末の機能が制限されるような環境下で提供機会を得てきた。たとえば、「映画の上映中に機内モードで」「数万人規模のスタジアムで輻輳(ふくそう)させずに」「非常時・災害時を想定してモバイル回線に頼らずに」「その部屋だけで、壁を通り抜けないように」といった通信ニーズへの対応だ。こういった掘り起こしには、検討初期段階からどうにかしてオピニオンリーダーやユーザーとの対話を実現することが必要不可欠であり、その要望に即応するだけの実装力が求められる。このようなプロセスは「インクルーシブ・デザイン」と呼ばれ、極端でも強いニーズを持つユーザーの意見を取り入れつつプロトタイプによる実証実験を取り付け、社会課題解決のインパクトから共感を得て、普遍的で日常的な価値を探る方法論が体系化されつつある。今後、多様化する価値観は人間に何層にも課題を与えるだろう。しかし、情報通信技術(ICT)に代表されるさまざまな技術の進歩とそれを生かそうとする「デザイン」により、点と点でしかないような専門同士を“かけ算”することで適合や解決ができると確信している。


第15回 「音で見える つながる 楽しむ」世界を (2020年7月28日掲載、8月1日Yahoo!ニュース転載)

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フジサンケイビジネスアイ 2020年(令和2年)7月28日付 (記事をクリックすると拡大イメージがご覧になれます)
フジサンケイビジネスアイ 2020年(令和2年)7月28日付 「音で見える つながる 楽しむ」世界を 「音にかかわるインターフェース」はヒト対ヒトから、ヒト対機械、ヒト対人工知能(AI)へとどんどん活用シーンを広げている。電話やテレビ会議のような離れた人どうしのコミュニケーションはもちろん、ロボットやスマートスピーカーの音声認識も活況だ。エヴィクサーの音響技術は、大規模なデータ処理を伴うクラウドサービスや「字幕メガネ」と呼ぶメガネ型ディスプレー端末の字幕表示アプリケーション等に加え、小型モジュール基板で提供する機会が増えている。そこには、IoT(モノのインターネット)やソサエティ5.0という表現で、各種センサーから取得される情報に注目が集まる傾向にあって、小型デバイスにも搭載しやすいマイクやスピーカーを有効活用する狙いがある。2018年4月に開かれた「ニコニコ超会議2018」では、『NTT超未来大都会』と題するブースで第5世代移動通信システム(5G)、AIなど様々な最先端技術がクリエーティブな企画とともに展示され、エヴィクサーも技術協力を行った。次世代のモバイルガジェットが大型ディスプレーや舞台上の進行に連動・同期する企画において、指先に乗るほどの基板サイズで音響通信機能の組み込みを実現した。新技術のプレゼンテーションという枠を超えて、新感覚や体感に訴える演出に開発当事者でも感動を覚えた。実際のところ、音響通信は他の最先端技術の展示をサポートする“裏方”だった。しかし、大人数が集まるイベント会場や多くのブース出展で想定される「モバイル回線・Wi-Fi・Bluetoothなどの混線や輻輳を回避する」効果や、来場者向け展示の音に合わせてデバイスがリンクする機能は「直感的で、現場スタッフにも扱いやすい」という特長を再認識する成果を得た。とりわけ、スマートフォンとは異なり画面上で容易に設定調整ができない小型端末では、運用のシンプルさは有効だろう。ウォークマンは音楽を持ち歩くというコンセプトで世界中に受け入れられた。カラオケはマイクを身近な娯楽ツールにした。エヴィクサーの音響技術は、スマホの普及をベースに映画や舞台芸術のバリアフリー上映など「視聴覚の補助と拡張」に貢献してきた。今後さらに進化したウェアラブルデバイスやIoTデバイスが登場するだろうが、安心・安全という価値提供を含めて、「人々をより幸せにする音のインターフェース」を実現するため自社技術を磨き続けていく。


「自分を活かす会社でイキイキ働こう! -魅力的な中小企業探しのすゝめ-」 (監修/八木田鶴子、編集/合同会社みんプロ、2019年)

第7章 音で人と人とをつなぐことに挑む – エヴィクサー株式会社

→ 書籍出版社の紹介ページ (外部サイトへのリンク)


The Urban Folks – Technology 「シーズ志向で市場の創生を目指す」 (2018年)

筆者プロフィール

技術ベンチャー創業経営者 エヴィクサー株式会社 代表取締役社長 瀧川 淳
2004年3月、エヴィクサー株式会社を設立。2008年ころより、業界に先駆けてACR(自動コンテンツ認識)技術、音響通信技術を開発し、テレビ放送局、大手広告代理店、映画会社、舞台のセカンドスクリーン、O2Oの取り組みで数多くの実績をもつ。要素技術の事業化、シーズオリエンテッドのビジネスモデルをテーマとした講演多数。2017年に第29回「中小企業優秀新技術・新製品賞」ソフトウエア部門で優秀賞、「MCPC award 2017」サービス&ソリューション部門で特別賞、「2017年 世界発信コンペティション」製品・技術(ベンチャー技術)部門で東京都ベンチャー技術優秀賞を受賞。2003年3月、一橋大学商学部卒。2017年より一般社団法人日本開発工学会理事を務める。

第1回 2018年5月6日 「死の谷とハイプ・サイクル」

第2回 2018年6月8日 「開発者目線とユーザー目線の使い分け、ブランディングの開始時期」


企業診断「シリーズ 挑戦する経営者」 (2017年)

経営者プロフィール

エヴィクサー株式会社 代表取締役社長 瀧川 淳
一橋大学在学中、東京電力の社内ベンチャー企業で長期インターンシップ・契約社員を経験。卒業後、韓国ベンチャーの日本法人立ち上げに参画。その後、MBOで独立し、エヴィクサー株式会社の代表取締役社長に就任。音響技術をベースとするシードで、新たな市場づくりに挑戦中。

音響の技術で新たな感動を創造「みえる、つながる、たのしむ」世界を実現する経営者

→ LEADER’S ONLINE (Webサイトに再掲、外部サイトへのリンク)

→ CiNii(NII学術情報ナビゲータWebサイトに再掲、外部サイトへのリンク)

→ 月刊『企業診断』(2017年02月号、外部サイトへのリンク)

会社情報 – エヴィクサー株式会社

「エヴィクサー」「Evixarロゴ」は、エヴィクサー株式会社の登録商標です。
音でみえる 音でつながる 音でたのしむ
音のソリューションパートナー

エヴィクサーは、音の信号処理に基づくソフトウェア(ACR技術、音響通信、音センシング)と、ネットワーク関連技術の研究開発に取り組む技術者集団です。
便利かつ使いやすい機能を追求することで、それまで限られた人にしか享受されずにいた技術を、一般ユーザーの方々にも広くご利用いただけることを目標としております。