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エヴィクサー、横浜市実証実験「音響通信によるUD防災ソリューション」についてレポート公開のお知らせ(2022-09-01)

平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
この度弊社エヴィクサーは、横浜市デジタル統括本部と「I・TOP横浜」が連携し、障害者スポーツ文化センター「横浜ラポール」におけるデジタルを活用したサービス向上(新たなスポーツ機会の提供や、施設の利便性向上等)に資するデジタルソリューションについての実証プロジェクトに採択され、2022年7月に「音響通信によるUD防災ソリューション」について実証実験を行い、その結果についてレポートを公開いたしましたので、お知らせいたします。
なお、当日の記録および関係者のインタビュー取材については月刊ニューメディア(2022年10月号「特集 災害時に情報弱者へのICT支援をどうする?!」)に依頼いたしました。
レポートのPDFデータは以下よりダウンロード可能です、ぜひご覧ください。
→ レポートPDF(1.7MB)


また、本実証実験の成果による「音響通信によるUD防災ソリューション」については、2022年10月5日水曜から東京ビッグサイトで開催される「危機管理産業展(RISCON TOKYO)2022」に出展予定です。詳細は追って弊社Webサイト等でご案内いたします。
→ 「危機管理産業展(RISCON TOKYO)2022」公式Webサイト (外部サイトへのリンク)


既設の非常放送設備が使える「音響通信」技術 誰一人取り残さない“発災通知”へ

非常事態発生時、視覚や聴覚の障害者や加齢による難聴者、日本語が分からない外国人へ、健常者と同じように発災告知と避難情報を伝えたい
この課題に対応するエヴィクサー株式会社の音響通信技術を使った防災ソリューションの実証実験が、障害者スポーツ文化センター 横浜ラポールで7月5日に行われた。視覚障害の全盲2人と弱視1人、聴覚障害のろう者4人、中途失聴2人が参加した検証を取材した。
取材(2022年7月5日): 月刊ニューメディア (外部サイトへのリンク)

当事者参加の防災訓練の難しさ

室内と屋外、プールで障害者がスポーツを満喫でき、文化活動ができる部屋や300席のラポールシアターもある横浜ラポール。障害者はもちろん、誰でも利用できるオープン性にあふれ、新型コロナ流行前は1日に約1,200人が来館する障害者スポーツ文化センターである。

副館長の小野佐幸美氏は、災害対応で心配事があった。年2回の避難訓練を有意義な機会とするため、どうすれば多くの障害当事者に参加いただけるか、ということだった。例えば、横浜ラポールで火災が発生すると、ブザー音と音声で「火災発生」を伝える非常放送、各階にあるデジタルサイネージ画面とOHPで手書きしながら表示する館内ケーブルTV画面の文字案内、LED回転灯の点灯で呼びかける。これらは開館時(1992年)に導入した仕組みで、「来館しているすべての障害者に避難行動を促すには、デジタル化を進め、よりスピーディーな情報伝達の手段を模索すべき段階」と小野副館長は話す。
「もっと確実に伝えられる手段はないか」と模索する中、デジタルを活用した障害者のスポーツや文化活動のサービス向上を目指す6つのプロジェクトを横浜市が横浜ラポールで展開することになり、その1つに「災害時の情報伝達」が採択された。プロジェクト名は「音響通信によるUD防災ソリューション」で、エヴィクサーが開発した音響通信技術「Another Track」を使う。デジタル情報を埋め込んだ音(トリガー音)をスピーカーから伝え、その音が聞こえる範囲にあるスマートフォンなどのマイク付きデバイスと通信する技術で、「このAnother Track技術により、火災や地震などの非常時に流れる音声を情報デバイスやデジタルサイネージなどが認識し、光のフラッシュやバイブ振動、音、多言語文字などのあらゆる手段で伝える仕組み」と、エヴィクサー・代表取締役社長CEOの瀧川淳氏は説明する。

「マイクロホン端子に接続」できる音響通信技術

エヴィクサーが提案する、音声にデジタル情報を重畳する音響透かし技術は、駅や空港、商業施設での情報提供や、スポーツや音楽イベントのライブ演出を目的にした利用が広がっている。ただ、音響透かし技術を非常放送設備から拡声すると、「機器の故障につながる恐れ」があると、電子情報技術産業協会の非常用放送設備専門委員会が2018年2月に「注意事項」を発表している。
一般的な放送設備が想定する周波数帯域(100Hz~10kHz)を超える想定外の高い周波数の音を利用した場合、「人にはほとんど聞こえない信号のため、過大な信号レベルであることに気付かずに放送し続けると、スピーカーやパワーアンプが故障する恐れがある」ことや、「高い周波数の音響透かし信号を過大なレベルで再生すると、過大入力による保護機能の動作で放送が中断・停止するなどの不具合発生の恐れ」を指摘し、導入を検討する場合には「出力信号の周波数が非常用放送設備システム全体で再生可能な周波数範囲内であることを確認してください」と助言している。消防庁も2020年3月に「放送設備のマイクロホン端子に接続して放送する場合」について、質問への回答として「通知」している。

瀧川社長は「Another Trackは人の耳で聞こえる音、可聴音をトリガー音として利用する仕組みなので、機器への影響を心配する必要はありません」と強調する。
既存の非常放送設備のマイクロホン端子に接続して拡張する提案は、小野副館長のもう一つの心配事である予算面の負担を軽くする。「施設内の中央管理室や防災センターから情報デバイスまでの配線が不要なため、工事費も削減できます。また、電波が届かないとか、届きにくい場所でも、音声が聞こえれば安定した利用ができます」(瀧川社長)。

検証したUD防災ソリューション機器

今回の実証実験では、非常用放送の音声と連動して光、振動、音で災害の発生を知らせる「モバイル災害通知デバイス」(愛称:ブルブルくん)、館内のデジタルサイネージ、LED回転灯を使った。「実験で検証した『音響通信によるUD防災ソリューション』の構成には3つの機器を用意した」と、エヴィクサー・取締役 執行役員COO兼CTOの鈴木久晴氏は話す。

1. 「ブルブルくん」モバイル災害通知デバイス
音声信号を受信し、聴覚障害者は振動と光で気付くことができ、スタッフは警報音と光で探すなど、素早い対応ができる。視覚障害者も振動と警報音で気付きやすくできる。

2. 発災電源タップ
音声信号を受信し、自動でコンセントのスイッチをONにし、LED回転灯で聴覚障害者に伝える。市販のLED回転灯を移動設置できるので低コストで導入できる。発災電源タップとして仮設対応できるタップタイプと、壁コンセント内へ設置できる電材タイプの2モデルを用意。

3. デジタルサイネージのコンテンツ切り替えHDMIスイッチャー
通常時は既存のコンテンツを表示。非常放送の音声信号を受信するとHDMIスイッチャーに切り替え信号を送信し、コントローラー内の非常用コンテンツを自動で表示する。

鈴木CTOは「非常放送設備のマイクロホン端子に接続して、タブレットにある音声メッセージを操作するだけです」と、運用操作の簡単さにも気を配ったと話す。

小野副館長は「土日や夜間のスタッフ配置はシフト制で、少人数です。操作できる人が限られている現行のシステムは、そういう点でも心配でした」。だから、誰でも扱える操作の簡単さにも注目している。
避難の実証実験に参加した視覚や聴覚の障害当事者から、次のような意見があった。
視覚障害者から「音だけが頼りなので、避難ルートなどをもっと伝えてほしい。誘導してくれる人が私たちをすぐに見つけ、サポートできる仕組みも考えてもらえれば」など。
聴覚障害者からは「首から下げたブルブルくんは私たちに必要な振動感知なので心強い装置。できれば、もう少し軽くしてもらえると女性も使いやすい。歩いていると振動を感じないので工夫を期待。サイネージ表示の文字数と文字の大きさも検討してもらいたい。また、盲ろう者には振動と光で伝達を考えてほしい」などだ。

横浜市が推進する産業連携の有力な一つ

このプロジェクトは行政のデジタル化に取り組む横浜市デジタル統括本部と、横浜市が産業連携を目指して立ち上げたプロジェクト「IoTオープンイノベーションパートナーズ横浜」(I・TOP 横浜)が連携した取り組みの一環という推進力に注目したい。防災に対してICT装置で、既存施設でも柔軟に対応できる仕組みを行政と民間で共創してビジネス化を目指すという狙いがある。

I・TOP横浜を担当する経済局イノベーション都市推進部 産業連携推進課担当課長の松本圭市氏は、「横浜ラポールでデジタルソリューションを使った6つのプロジェクトが7月から始まっています。電波ではなく音響通信を使うこの技術が早期に実用化され、同様の課題を抱える施設の選択肢の一つになるよう支援したい」と、手応えを語る。
また、実験を見学した横浜市健康福祉局障害福祉保健部障害自立支援課長の今井智子氏は、「障害には多くの特性がありますので、デジタル技術によって、それぞれの障害特性に合ったコミュニケーション支援が可能となることを期待しています」と話す。

エヴィクサーの音響通信技術は、建設時点から組み込むことも、今回の実証実験のように既存施設にも十分に対応できる。まさに「施設年齢フリー」というもう一つのUD提案ではないだろうか。


下記は、実証実験後による横浜市障害者スポーツ文化センター(横浜ラポール) 管理運営課の天野氏のインタビュー映像となります。


→ 横浜市による記者発表(外部サイトへのリンク)
→ 「YOKOHAMA Hack!」(創発・共創とオープンイノベーションの仕組みづくり) 詳細(外部サイトへのリンク)

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